キミノオト
それにしても、やっぱりここは、みんなが幸せにあふれているなぁ。
この空気が好きなんだよな、なんて思っていたら、突然ベースの及川誠(おいかわまこと)が話しかけてきた。
誠は中学からの同級生。
抜群のスタイルできりっとしたいわゆるイケメンってやつ。
少しばかりあほなのが欠点なんだけど。
「ねねねね、後ろの女の子たち、レベル高い!」
ほら、そんなことだろうと思ったよ。
「誠、陽貴の顔見てみな。呆れを通り越して、誠らしさに安心しちゃった顔してるよ」
さすがよくわかっている。
彼は、ドラムの四宮綾(しのみやりょう)。
高校からの付き合いだが、俺のことをよく理解してくれている、信頼できる人間だ。
童顔なかわいらしい顔立ちに似合わず高身長の彼からは、底知れぬ包容力すら感じる。
「本当に!今回は見ないと損だよ!」
誠の熱意に負け、綾ちゃんとともに周りを見渡すふりをして振り返った。
時がとまったかと思った。
一瞬にして、目を奪われる。
季節は夏だというのに、涼やかで、透明感のある女の子。
「え、かわいい」
「だね」
前を向くなり、口から本音がこぼれる俺たち。
男性の視線が集まっていたのはこれか。