キミノオト
「だから言ったでしょ!絶対陽貴の好みだと思った。ちなみに俺は、派手髪な子のほうが好み」
「きいてないよー」
誠のアピールにすかさず突っ込む綾ちゃんのおかげで少し冷静さを取り戻した。
とはいえ、ついつい後ろに気がいってしまう。
どうやら、最近心に響いた曲の話をしているらしい。
「そうだなぁ…あ、ドラマの主題歌になってた曲」
「あ、これ今めちゃ人気のバンドの曲だよ。メンバーみんな顔キレイだし。トリノコシってバンド。」
突然出てきた自分たちの話題に、緊張が走る。
「絶対、この曲を作った人は心のきれいな優しい人だと思う」
動揺した。
純粋に曲だけで、俺のことをそんな風に評価してくれる人がいるなんて。
感動すら覚えていた俺は、つい手に持っていたペットボトルを落としてしまった。
「大丈夫ですか?」
そういって、すぐにペットボトルを拾い上げてくれたその子を正面から見つめる。
澄んだ大きな瞳と目が合うと、つい自然と微笑んでしまった。
「ありがとうございます」
途端に恥ずかしそうに顔を赤らめるこの子のことを、さらにかわいいと思ってしまった。