キミノオト

【5】


結局、アトラクションまで一緒に乗ることになってしまった…。

黒髪が陽貴さん、茶髪が誠さん、金髪が綾さんというらしい。

年は1つ上で、みんな優麻ちゃんと同じ年みたい。

彼が座っている右側に全神経が集中しているような感覚。

私汗臭くないかな、とか、そんな不安がよぎる。

ゆっくりと動き出した乗り物も、進むにつれて大きく動きだした。

物語を鑑賞するように音楽にのせて移動するアトラクションなのだが、久しぶりすぎて忘れていた。

右にいる彼にぶつかってしまわないよう、左隣の優麻ちゃんに寄る。

「なんで離れるんですか?」

するとそれに気づいた陽貴さんが、意地悪そうにきいてくる。

「すごく揺れるし、ぶつかっちゃうかもしれないからで…きゃっ」

いったそばから大きく揺れて、陽貴さんの方に体が傾く。

「大丈夫?」

さっと支えてくれた陽貴さんだけど、全然大丈夫じゃない。

心臓が爆発しそう…

昨日まで元カレのことであんなに悩んでいたのに、今はそんなことどうでもいいくらい心臓が忙しく動いている。

そもそも、この人は私の好みドストライクなのだ。

話しているときの言葉の選び方や、気遣いに至るまで、優しさがにじみ出ている。

ついでに言えば、中世的なお顔も好みだったり。

しばらく恋愛はいいや、なんて思っていたはずなのに。
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