キミノオト
『お前みたいなダメ人間が、愛されるわけないだろ。』
そこでまた元カレの言葉が脳裏をよぎった。
「ごめんなさい!」
はっと我に返った私は、慌てて陽貴さんから離れる。
「そのままでもよかったのに」
なんていたずらっぽく笑った陽貴さんだったけれど、私の笑顔は引きつっていたと思う。
私なんかが、恋愛したらダメ。
私のことなんか誰も愛してくれないんだから。
急に現実に引き戻された私は、アトラクションが止まるまで作り笑いでやり過ごした。
途中、手を握られて左を見たら、優麻ちゃんが心配そうにしていた。
優麻ちゃんにはお見通しだね。
私は、優麻ちゃんの手をぎゅっと握り返し、大丈夫だよと笑って見せた。
アトラクションが終わって、お別れの時。
「楽しい時間をありがとう。きっと今日のことずっと忘れないくらい、いい思い出になったよ」
本当、この人の言葉は素敵だな。
ありがとう、だけで済むのに、相手を気持ちよくさせる。
まるで、あの主題歌の歌詞みたい。
「こちらこそ、お話しできて楽しかったです。ありがとうございました」
「それじゃあ、またどこかで」
きっと、また、はこない。
連絡先を聞かなければ、友達としてすら、もう会うことはない。
そうわかっていても、動くことができなかった。