キミノオト
「だから言ったでしょ!絶対陽貴の好みだと思った。ちなみに俺は、派手髪な子のほうが好み」
「きいてないよー」
誠のアピールにすかさず突っ込む綾ちゃんのおかげで少し冷静さを取り戻す。
とはいえ、一度存在に気づいてしまうと、ついつい気になってしまうもので。
そりゃ俺だって男だし、好みの子がいたら気になりますよ、なんて自分に言い訳して。
どうやら、最近心に響いた曲の話をしているらしい。
「そうだなぁ…あ、ドラマの主題歌になってた曲。昨日の歌番組でもやってた」
「あー、昨日珍しく海音が口ずさんでた曲じゃん。これ今めちゃ人気のバンドだよ。メンバーみんな顔キレイって有名。トリノコシってバンド」
突然出てきた自分たちの話題に、緊張が走る。
「絶対、この曲を作った人は心のきれいな優しい人だと思う」
動揺した。
こんなところで、俺のことをそんな風に評価してくれる人に出会えるなんて。
感動すら覚えていた俺は、つい手に持っていたペットボトルを落としてしまった。
「大丈夫ですか?」
そういって、すぐにペットボトルを拾い上げてくれたその子を正面から見つめる。
澄んだ大きな瞳と目が合うと、つい自然と微笑んでしまった。
「ありがとうございます」
途端に恥ずかしそうに顔を赤らめるこの子のことを、さらにかわいいと思ってしまった。