キミノオト
この強引さ、龍也みたい。
こわい。
血の気がひいて、暑いはずなのに手足が冷えていく感覚がする。
離してもらおうと抵抗すると、さらに強く引っ張られ、ぐらりと体が傾いた。
倒れこみそうになり、反射でぎゅっと目をつぶる。
その瞬間、ふわっと心地よい香りとともに、あたたかな手が私の体を支えるように優しく触れる感触がした。
「この子に何か用事ですか?」
少し高い、なぜか安心するその声。
そっと目を開けると、気まずそうな顔の男性たちが目に入る。
「なんだ、友達って男かよ。しらけたわ。行こうぜ」
悪態をついて離れていく背中。
状況がいまいち把握しきれない。
「大丈夫ですか?」
男性たちが去っていったのを確認し、声をかけてくれるその人。
「助けていただきありがとうございます。でも、どうして陽貴さんが…」
さっき別れたばかりなのに、なぜここに彼がいるのか。
「秘密」
そういって、唇に人差し指を当て内緒のポーズをとる姿は、どこか色気を感じる。
あぁ、だめだ。
私、もっとこの人のことを知りたいと思ってしまっている。
私は恋なんてしちゃいけないのに。