キミノオト
「今日も眠れなかったの?だから一緒に寝ようって言ったのに!」

隈に触れて、心配そうにする優麻ちゃん。

メイクでうまく隠したつもりだったんだけどな。

「ちゃんと寝たよ。それに、そんなに迷惑かけられないよ」

「迷惑じゃないよ!かわいい海音のためだもん!」

「優麻ちゃん、大すきぃぃ」

ぎゅっと抱き着くと、優しく頭をなでてくれる温かい手。

「私も海音が大好きだよ。今日はちょうど金曜日だし、お泊り会だ!」

「ありがとう。お夕飯は任せて」

「やった!ハンバーグをリクエストします!」

そういって、私の手をひいて歩き始めた優麻ちゃん。

本当に、彼女には救われてばかりだ。

電車通勤の彼女と駅で別れると、会社へと歩みを進めた。



「おはようございます」

「あぁ、水野さん、おはよう。早速だけど、問い合わせきてるから対応して」

PCを起動し、メールを確認する。

地元にある本社の総務部に勤務していた私。

社員数や売り上げの増加に伴って、都内にある支店にも総務の人員を配置することになり、タイミングよく独身の私に白羽の矢が立った。

左遷だ、と思われるかもしれないけれど、それでもよかった。

とにかく彼から逃げたかったから。

とはいえ、やることも問題も山積みで、寝不足の体に鞭打ちながらなんとか業務をこなしている毎日。
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