キミノオト
陽貴さん達が大人気なアーティストだと知ってから、3か月が経った。
意識し始めて気が付いたこと。
世間はそこら中彼らで溢れている。
彼らの音楽を耳にしない日はないし、街を歩けば大きな広告がいくつも。
テレビはもちろん、買い物に出かけたお店、電車の中、街中の大きな看板。
よく今まで彼らを知らずに生きてこれたなと、自分に感心するくらい彼らは注目の的だった。
別のことで頭がいっぱいでそれどころじゃなかったからって、苦しい言い訳。
今は不安感が少し和らいで、代わりに陽貴さんに会いたいって気持ちが募っていて。
それを少しでも紛らわせたくて、彼らの音楽をたくさん聴いて、ライブ配信やSNSの投稿なんかも確認したりした。
でもそれはいつも逆効果で、さらに会いたくなって、また同じことを繰り返して。
だけどこの会いたい気持ちが、恋しているからなのかは、いまだにわからないまま。
悶々とした日々を過ごし、気づけば季節は冬になりかけていた。
「海音、来週の土曜日予定ないよね?」
仕事から帰り、お風呂を済ませたところでインターホンが鳴った。
応答するなり、モニター越しに優麻ちゃんからの失礼な質問。
「予定はないけど…聞き方…」
仕事と優麻ちゃんとの予定以外は、家に引きこもっている現状を知っているからこその聞き方なのはわかるけど、失礼だな。
「じゃあ、1日かけてでかけるからね」
「どこに?」
「それは当日のお楽しみ」
いたずらっ子のように笑った優麻ちゃんは、なぜかすごく楽しそうで鼻歌を歌いながら、隣室に帰っていった。