キミノオト
「やっちゃったぁぁぁ」
「ふふふ、大丈夫。何もやらかしてないよ」
まるで話をきいていたかのような励まし方をする優麻ちゃん。
まさか…
「ごめんね。誠さんと綾さんとこっそり聞いてた☆」
てへ、とかわいくごまかす優麻ちゃん。
聞いてた☆じゃないのよ…。
「そんなことより、二人きりで話がしたいなんて、やるじゃん!」
そうだった。
聞かれていた恥ずかしさで一瞬忘れていたけど、夢じゃなかったんだ。
「優麻ちゃん、どうしよう」
二人きりでゆっくり話がしたいって…。
すでに心臓ばくばくなのに。
私、生きて帰れるかな…。
「大丈夫よ、落ち着いて」
「優麻ちゃんも一緒じゃダ「ダメでしょ、どう考えても」」
言い終わる前に怒られてしまった。
「前に進むチャンスだよ」
そういって、優麻ちゃんが髪を整えてくれる。
「ついでにリップも塗りなおしちゃお!ほらみて、今日の海音、こんなにかわいいのよ」
鏡に映る私を見て、優麻ちゃんは満足げにしている。
「もうこんなチャンスめぐってこないかもしれないよ。せっかくのチャンスなんだから、海音も頑張って伝えたいことを伝えて」
緊張で冷え切った私の手が優麻ちゃんの温かい手で少しずつ温度を取り戻す。
「ありがとう」
勇気を出して頑張ろう。
後悔しないように。
応援してくれる優麻ちゃんをがっかりさせないように。