キミノオト
・・・
聞き間違い?
こんな都合のいい聞き間違いするなんて、私も図太くなったものだ。
「いや、聞き間違いじゃないよ」
あれ、また?
「うん。声に出てる。海音ちゃんのことが、一人の女の子として好きなんだ」
とりあえずほっぺをつねってみて…うん、痛い。
「何してるの。夢でもないよ」
「ええええええ!?」
私の反応にくすくすどころかおなかを抱えて笑い出す陽貴さん。
「海音ちゃんって、大人しい子だと思ってたけど、実は感情豊かなんだね。もっと海音ちゃんのことが知りたい」
「これドッキリとか?」
慌ててカメラが隠されていないか部屋中を見渡す。
「違います。海音ちゃんの気持ち聞かせてほしい」
そういってそっと手を握られる。
その手は冷たく、少し震えているように感じた。
緊張、してるのかな。
「疑ってごめんなさい。陽貴さんは人気者で、私なんかの手が届く相手じゃないのを理解したうえで、私も伝えたいことがあって、玉砕覚悟でついてきました。私も、陽貴さんのことが好きです。許されるなら…彼女になりたいです」
ぎゅっと手を握り返してそう返事したものの、最後は涙があふれて声が震えてしまった。
「うれしい。これからよろしくね」
途端、陽貴さんの温かい腕に包み込まれる。
優しい香り。
「それと、海音ちゃんは自分を過小評価しすぎ。俺の目に狂いはないんだから、自信もって」
そういって、優しく頭をなでてくれる手は大きくて、温かかった。