キミノオト

【10】


「ゆっくり入っておいで」

急展開すぎて、脳内処理が追い付いていないけど、急遽お泊りすることになった私。

お風呂と洗濯機の説明を終え、颯爽と去っていく陽貴さんを見送る。

急なお泊りで着替えがないから、入浴中に洗濯乾燥を済ませる。

服は陽貴君のを借りれるけど、さすがに下着は、ね。

それにしてもこの洗濯機、乾燥機能までついてるし、パネル式だし、高性能だなぁ。

お風呂もひろーい。

我ながら、バカ丸出しな脳内。

いや、でも今、お花畑だし、満開だし。

なんて、自分で自分に言い訳してみたり。

さっきからずっと頭の中がふわふわしている。

私が陽貴さんの彼女だよ?

しかもいきなりお泊り。

幸せすぎて、もしかして本当は事故にでもあって、死にかけてるのかなとか考えてしまう。

さすがにそれはないと思うけど。

もう一度頬をつねってみると、やっぱり痛い。

現実。

付き合ったその日にお泊り承諾して、軽い女だと思ったかな。

でも、せっかく陽貴さんがもう少し一緒にいたいって言ってくれたのに、断れるわけない。

忙しい身だし、一緒に過ごせるときは一緒にいたいし。

「こんな幸せでいいのかな…」

私なんかが。

そんな独り言は広いお風呂に小さく響いた。
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