キミノオト

最上階でエレベーターを降りる。

「それじゃ、お疲れー」

「おやすみ」

「お疲れ」

あれ?別行動?

誠さんと綾さんはそれぞれ別の部屋に入っていった。

状況に追いつけず困惑する私に気づいているのか否か。

歩みを進めた陽貴さんは、一番奥のドアの前で止まった。

手慣れた様子でカードキーをかざすと、開錠音が鳴る。

「どうぞ」

ドアを抑えて中に入るよう促すその姿もスマートでかっこいい。

「お、お邪魔します…」

おそるおそる中に入ると、なんとなく陽貴さんと同じ香りがする。

「こっち」

陽貴さんに促され、ついていった先にはモノトーンで統一されたおしゃれなお部屋。

キッチンもあるし、この家具家電…なんだか人が生活している家のリビングみたいだな。

「ソファに座ってて。紅茶でいい?」

「おかまいなく…」

いや、まさか。

こんな大人気なアーティストが会って2回目の一般人をいきなり家に招くわけ…

「ごめんね、急に家に連れてきて」

家なんかい!

もう動揺でテンション感がわかんなくなってきた…。

「陽貴さんのおうちなんですか…?皆さんも一緒とかではなく…?」

「同じマンションだけど、それぞれ別の部屋だね」

なんてことでしょう。

一人暮らしの男性のお宅にのこのことついてきて、遊んでる女って思われたかも…。

「思ってないよ。何も言わずにつれてきたの俺だし。気づいてないんだろうなって思ったら面白くなっちゃって黙ってたし」

いたずらっ子のように笑う陽貴さんもかわいい。

じゃなくて!

「心の声聞こえる方ですか?」

「いや、思いっきり声に出てたよ」

穴があったら入りたいとは、こういう時のためにある言葉なんですね。
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