キミノオト
「ところで、遅くなっちゃったけど、おなかすいてない?」
「あ、そうですよね、ライブの後何も食べてないですもんね」
陽貴さんに問いかけられて時計を見ると時刻は23時。
あんなパワフルなステージを終えた陽貴さんはおなかがすいているはずだ。
「冷蔵庫開けてもいいですか?あとキッチンも少し見せてください」
「え、いいけど」
許可を得て家にある食材を確認する。
うん、これは自炊してないな。
忙しい身だし、自炊する余裕はないか。
「適当に食材使ってもいいですか?」
「もちろん。作ってくれるの?」
陽貴さんの驚いた顔を横目に、調理を開始する。
一応確認すると、今日使う食材にアレルギーのものはないとのこと。
かろうじて作れたチキンライス。
冷凍庫にご飯とささみ肉、それからミックスベジタブルがあって助かった。
自炊しない人の家にミックスベジタブルって違和感ある気もするけど。
卵がないから、オムライスにはできなかったのが残念。
「めちゃくちゃおいしい!料理上手なんだね」
喜んでくれてるみたいで嬉しい。
陽貴さんはあっという間に平らげてしまった。
「ごちそうさま。本当にそれっぽっちで足りるの?」
私のお皿を見て心配そうにする陽貴さん。
食べる前から何度も確認してくれてるから、本当に心配してくれているんだろう。
「胸がいっぱいで…」
本当は食べなくてもいいくらいの気持ちだけど、何も食べないのは気を遣わせちゃいそうだから少しだけいただいた。