キミノオト

洗い物くらいさせてという陽貴さんをうまく言いくるめ、ちゃちゃっと洗い物を済ませる。

食洗機はあるんだけど、私手洗い派なんだよね。

使ってる形跡もないし、もしかしたら陽貴さんも手洗い派かな。

いや、そもそも自炊しなかったら食洗機使うほどの洗い物出ないか、なんてどうでもいいことを考える。

リビングへ戻ると、ソファに座っていた陽貴さんに突然腕を引かれた。

バランスを崩した私は、思わずぎゅっと目をつぶる。

あれ、痛くない。

目を開けると、私の脚を挟むように脚がのびている。

冷静に状況を整理する。

どうやら、陽貴さんの脚の間に座らされているようだ。

状況を理解したところで、焦って立ち上がろうとすると後ろから抱きしめられた。

「捕まえた」

これは、全女子憧れのバックハグというものなのでは!?

心臓がうるさい。

「離してください」

「こうされるの、嫌?」

「嫌じゃないですけど…心臓がもちません」

最後の方は泣きそうな声だったと思う。

耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。

「慣れようね」

「ううう…」

そのままの態勢でテレビを見始める陽貴さん。

多分この人Sだ。

諦めた私は、なんとか心臓を落ち着けようとしばらく無心で過ごした。
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