キミノオト

信じられないくらいドキドキするけど、陽貴さんに抱きしめられると、温かくていい香りがして、安心する。

だんだん心臓の動きが正常に戻りはじめると、急に眠気が襲ってきた。

「そろそろ寝ようか」

私が目をこすっているのに気付いたのか、陽貴さんに声をかけられた。

眠気でぼーっとする頭で、なんとか歯磨きをして寝る支度を整える。

寝室へと案内してくれた陽貴さんだけど、私がベッドを使うなんておこがましい。

「私はリビングでいいれす」

呂律が回らない。

「そんなこと許可できないよ。俺がソファで寝る」

「じゃあ床で寝ます」

「それこそダメだよ。じゃあ、一緒に寝ようか」

きっとここで私が拒否すれば、自分がリビングに行く気だろう。

それは何としてもとめなくては。

「一緒に寝ます」

私の返事に一瞬フリーズしたように見えたけれど、すぐに何事もなかったかのようにベッドに私を誘導する。

ベッドは大きめのサイズ感で、二人で寝てもまだ余裕がある。

自分も横になった陽貴さんだけど…なんか遠くない?

私たちの間には隙間。

掛け布団が浮いているところから冷たい風が入ってくる。

私と付き合ったこと、後悔してるのかな。

やっぱり、付き合ったその日にお泊りってひかれた?

「くっつくのいや?」

眠い頭でぐるぐる考えていると、思わず口からそんな言葉が出ていた。
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