キミノオト
【11】
鳥のさえずりで、目が覚める。
なんだかすごく幸せな夢を見ていた気がする。
体が温かい何かに包まている感覚がして、顔だけ動かして周りを確認すると、私の頭より少し高い位置にあるきれいなお顔。
ええっと?
寝ぼけた頭で状況を整理する。
私が、陽貴さんに、向かい合った状態で抱きしめられている。
…あ、思い出した。
私、昨日、陽貴さんの彼女になれたんだ。
しかもキスしちゃったよね?
陽貴さんはどう思ったかな。
軽い女って思われてないかな。
とりあえず陽貴さんの腕から抜け出そうと試みる。
途端に抱きしめる力が強くなり、完全に動けなくなった。
「どこ行くの?」
寝起きで少しかすれた声。
「起こしちゃいましたね、すみません」
「いや、起きようと思ってたよ、おはよ」
起きようと思ってたってどういうことだろう。
絶対に私が動いて起こしたのに、気にしないように言ってくれてるんだろうな。
優しい、好き。
見上げると、甘い顔で微笑む大好きな人。
本当に、この人の彼女になれたんだ。
「よかった夢じゃなかった」
「え?」
「都合のいい夢を見てただけだったらどうしようかと思った」
陽貴さんも同じことを思っていたらしい。
胸に顔を埋めるようにぎゅっと抱き着く。
「現実です。後悔しても遅いです」
「後悔なんかしないし、もう離してあげるつもりもない」
私たちは、ふふっと笑いあって、しばらくそのまま抱き合っていた。