キミノオト
鏡の前で身支度を整える。
最低限のメイク道具しか持ってきていなかったから陽貴さんのを借りたんだけど、品ぞろえ豊富でびっくり。
メイクもパフォーマンスをよりよく魅せるための一部だって、前何かのインタビュー記事で言ってたのを読んだことあったけど、メイクさんがやってくれるものじゃないのかな?
「今日、何かしたいことある?」
身支度を終えたタイミングで陽貴さんに声をかけられる。
昨日までのライブで疲れているはずなのに、私の希望をきいてくれようとしているようだ。
「おうちでのんびりしませんか?実は私、インドア派で」
「じゃあ、おうちでのんびりにしようか」
そうと決まれば巣ごもり準備だ、と、買い出しに行くことに。
行くといってきかない陽貴さんと一緒に家を出る。
絶対バレないからと謎に自信満々な陽貴さん。
たしかに、溶け込んでるけど。
オーラが隠しきれていない気がする。
他人同士くらいの距離を保ちつつ、ひとまず必要そうなものを一通りかごに入れる。
飲み物、お菓子、それからちょっとした食材。
かごを持ってくれている陽貴さんを盗み見る。
かご似合わないなぁ。
なんだろう、風格があるのにかごって…温度差で風邪ひきそう。
お会計を終えると、足早に陽貴さんのマンションに帰った。