キミノオト

フリーズしている私に、陽貴さんは追い打ちをかける。

「俺のこと好きじゃないの?」

意地悪な顔で楽しそうに笑っていらっしゃいます。

確信犯だなこれは。

さっきまでのも演技ってことですね。

意地悪されてばかりはなんとなく癪。

でも、自分から抱き着くなんてハードルが…

いや、できるぞ私!

覚悟を決めると、勢いよく陽貴さんに抱き着く。

「ぐふっ。なかなか情熱的だね」

そういって笑う彼。

思った以上に勢いがよかったらしく、一瞬苦しそうな声が聞こえたけど。

「陽貴君、大好きです」

胸に顔を埋めたまま、気持ちを伝える。

対抗するべく、呼び方を変えてみた。

さすがに呼び捨てまではできなかったけれど。

「本当、ずるいよね」

顔を上げると、困ったような顔をした彼と目が合った。

「無自覚が一番怖いね」

手が顎に触れたかと思えば、上を向かされ、すかさず唇が重なる。

「んっ」

声がもれて一気に恥ずかしさがこみあげてくる。

味わうように何度も角度を変えて重なる。

陽貴君はもしかしたらキス魔なのかもしれない。

酸素を求めて口を開くと、するりと入ってくる舌。

一瞬びっくりしたけど、なにこれ。

気持ち良すぎて何も考えられない。

恥ずかしさなんてどこかに消え去っていた。
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