キミノオト
「おはようございます」
挨拶を済ませ、自席につくと同時にPCを起動させた。
総務部に所属する私は、まずメールを確認するところから1日の業務を始めるのが習慣になっている。
私が勤めているのはITの会社で、実家のある地域に本社を構える中小企業。
これまでは、支店に人員を割くほどではなかったため、総務機能はすべて本社で担っていた。
総務のサポートをしてくれる庶務さんは支店にもいたんだけど。
社員数や売り上げの増加に伴って、効率を考え、都内にある支店にも総務の人員を配置することになった。
新たに採用する話もでていたけれど、総務は取引先や社員の大事な情報を扱う核。
新たに人を入れるのはリスクが大きすぎる、というのが上層部の判断だった。
元々いる人員でまかなうとなると、一番若く家庭を持たない私に白羽の矢が立つのは自然な流れだろう。
左遷だ、と思われるかもしれないけれど、別にそれでいい。
私にとっては願ってもみない好機だった。
とにかく彼から逃げたかったから。
考えるよりも先に、承諾の返事をしていた。
とはいえ、いざ異動してみたらやることも問題も山積み。
寝不足の体に鞭打ちながらなんとか業務をこなしているのが現状。
来客や電話の対応を挟みながら、ひたすら画面とにらめっこして黙々と作業を進める。
周りの社員さん達が水野さん今日も仕事できすぎ…と褒めてくれていたらしいけれど、集中している私はそんなこと知る由もなかった。