キミノオト

【2】

優麻side


「おーい!海音!お疲れ!」

少し青い顔をした海音が駆け寄ってくる。

「お疲れ様。待たせちゃってごめんね」

何事もなかったかのようにふるまっているけど、またあいつに似た人でも見たのか?

海音を苦しめ続ける憎い男。

元々、付き合うのには反対だった。

私の弟と海音の元カレは、子供のころ同じスポーツクラブにいたから、昔から存在は知っていた。

あまり評判が良くなかったし、絶対海音にはもっといい人がいた。

でも、海音は、かなり自己肯定感が低い。

元々自信のあるタイプではなかったけれど、あの男のせいで地に落ちた。

海音は、友人の贔屓目をとっても、かなりかわいい。

その証拠に、今も近くを通る男どもがちらちらと海音を気にしていく。

色白の肌に小柄で華奢な体。

さらさらの黒髪、小さな顔。

長いまつげで覆われている大きな瞳は、少し茶色がかって透明感がある。

おまけに優しい子なのだ、この子は。

私が男なら、絶対に放っておかない。
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