キミノオト
「ねぇ、僕の大事な彼女に何しようとしてるの?」
後ろから抱きしめられた温かい感触、大好きな高めの声、落ち着く香り。
また助けに来てくれた。
一瞬で安心感に包まれる。
「は?彼氏?」
「いや、はったりだろどうせ。横取りはよくないよ~お兄さん」
「信じたくないならそれでもいいけど」
食ってかかる二人組に、いつもの優しい声で話す。
「その手どけてくれる」
と思いきや、突然、聞いたことのない低い声で威圧する。
二人組はあわてて手を離すと、なんなんだよ、と言いながら逃げて行った。
「大丈夫?怖かったね」
私の正面に回ると、いつもの優しい声で心配してくれる陽貴君。
「助けてくれてありがとう」
涙が止まらない私をなだめるように頭をなでる。
「とりあえず、家に帰ろう」
手をひいて歩き出す陽貴君。
人前で手をつなぐなんて、ばれたら大変なことになる。
わかってるのに、今は離したくない。
自分勝手な彼女でごめんね。