キミノオト
唇が離れ、ゆっくり目を開けると、なぜか陽貴君の後ろに天井が見える。
いつの間にかソファに横たわっていたらしい。
夢中で気づかなかった。
「もう大丈夫?」
「え?」
「不安そうな、何かにおびえたような顔してたから」
もうすっかり陽貴君で頭がいっぱいです。
「陽貴君で満たされた」
冗談っぽくそういうと、かわいい、って笑ってくれる優しい彼。
「じゃあ、ご飯でも食べようか」
今日は、陽貴君一押しのお店のテイクアウト。
私が仕事をしている間に買いに行ってくれてたらしい。
「ありがとう。これにはかなわないけど、明日は私に任せてね」
陽貴君が用意してくれたご飯はどれもおいしくて、今日の嫌な気持ちなんて完全に忘れた。
幸せ。
食後まったり時間を過ごしながら、今日はどっちが先にお風呂に入ろうかって話していると。
「今日は、一緒に入ろうか」
「へ?」
突然爆弾を投下されて変な反応をしてしまう。
「だめ?」
「いやいやいや、それは…」
子犬のような瞳でおねだりされるけど…だって一緒に入るってことは、全部見られちゃうよね!?
陽貴君の周りにはスタイル抜群の女の子ばっかりだろうし、私の凹凸のない姿を見たら、がっかりされちゃうんじゃ…。
「お願い」
「…はい」
結果、陽貴君のおねだりが一枚上手でした。