キミノオト
なんとか交渉して勝ち取った泡風呂作戦。
私が先に入って、陽貴君を待つ。
「入るよ」
タオルを巻いて入ってきた陽貴君の体は、思っていた以上に鍛えられていて、しっかり男の人だった。
顔が中世的だから、勝手に線の細い姿を想像してた。
「えっち」
あまりにもじろじろ見すぎていたからか、陽貴君は笑っている。
「ご、ごめん!想定外の筋肉で」
私の背後に回ると、くすくす笑う陽貴君。
「海音は全身真っ白だね」
そういってうなじをなぞられる。
「ひゃっ」
変な声が出てばっと口をふさぐ。
恥ずかしい…。
もっとかわいい反応があったのではなかろうか。
とっさに出る声って、本性出るよね。
「手首、あざになっちゃったね」
そういって、優しく腕に触れる。
つられて見ると、両腕につかまれた跡が残っていた。
「元々、痣になりやすい体質だからかな」
「もうちょっと早く迎えにいけばよかった」
申し訳なさそうにいう陽貴君。
「大通りから外れてたのによく見つけてくれたよね。ていうか、そもそもなんで外にいたの?」
「海音が遅いから、心配になって迎えに行ったんだよ。そしたら、海音の声が聞こえた気がした」
耳がよすぎるなんてもんじゃない気がする…。
「陽貴君が来てくれて安心した。ヒーローみたい」
「海音が俺に助けてって言ったのちゃんと聞こえてたよ。1番に俺を頼ってくれて嬉しかった」
優しい陽貴君。
こんな私なんかのことも宝物みたいに扱ってくれる。
この人には頼っていいんだ。
甘えてもいいんだ。
「大好き」
振り向きざまにふいうちでキスをする。
陽貴君は一瞬固まった後、頭を抱えていた。