キミノオト
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楽しかった時間はあっという間に過ぎるもので、気づけば時刻は21時を回ろうとしている。
「そろそろ帰ろうかな」
「送るよ」
気持ちは嬉しいけれど、あまり二人で外を歩くのはよくないだろう。
それに、思ったより近くに住んでいたし一人でも問題なく帰れる。
私は片道でも陽貴君は戻ってこなきゃいけないわけだし、付き合わせるわけにいかない。
「大丈夫だよ。そんなに遠くないし」
「俺が、もう少し一緒にいたいから」
ずるい。
そんなこと言われたら断れないじゃん。
結局、陽貴君と並んで歩く。
夜だから大丈夫と謎理論を展開しているけど、この人はもっと警戒した方がいいと思う。
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「送ってくれてありがとう」
アパートどころか、部屋の前までしっかり送ってくれた陽貴君。
かなり心配性なようだ。
なぜか無言な陽貴君を不思議に思いながらも、鍵を開ける。
すると、突然ガチャリとドアを開けた陽貴君に部屋に引き込まれる。
「わっ」
背後でドアが閉まった音が聞こえた。
私の体は、陽貴君の体にすっぽり包み込まれている。
「陽貴君?どうしたの?」
「充電」
なるほど、なら私も。
背中に手を回すと、さらに強く抱きしめられた。
「海音、俺と一緒に住まない?」
突然の発言に動揺する。
「俺の都合で次いつ会えるかもわからない。だけど、一緒に住めば海音にいつでも会える。付き合い始めたばかりでこんなの重いってわかってるけど…」
甘えたように話す陽貴君。
私だって、一緒にいられるならそうしたい。
でも、私なんかが、陽貴君の大事な場所に居座っていいんだろうか。