キミノオト

【13】


お風呂の後は、お互いの髪を乾かしあうのが恒例になっている。

私の長い髪も文句言わず、ていねいに乾かしてくれる陽貴君。

触れる手が心地よくて、いつも眠くなっちゃうんだよね。

「眠そうな顔してる」

ドライヤーのスイッチを切ると、私の顔を覗き込んで陽貴君が笑う。

「陽貴君に乾かしてもらうの気持ちよくて」

陽貴君はささっとドライヤーを片付けると、なぜか急に私をお姫様抱っこで抱き上げた。

「え、どういう状況これ」

「このまま寝室連れてってあげる」

恥ずかしがっている私を楽しそうに運ぶ意地悪な陽貴君。

必死で服の裾をおさえる。

私の私物が増えてきた中で、陽貴君にどうしてもと懇願されて、陽貴君のものを借りているのが部屋着なんだけど、踏んで転ぶと危ないからって、ズボンを禁止されていて。

ワンピースみたいに着てるから、捲れたら見苦しいものを見せてしまう。

自前のショーパンを履いたこともあったけど、逆にダメ、と、なぜか却下された。

寝室につくと、優しくベッドにおろしてくれる。

そのまま陽貴君も横になるのかと思ったら、違うらしい。

「海音、好きだよ」

目の前にあるきれいな顔がゆっくり近づき、優しくキスされる。

「今日、海音がほかの男に連れてかれそうになってるの見て、誰にも渡したくないって本気で思った。独占欲丸出しで情けないけど」

「うれしいよ。私は、陽貴君のだよ」

安心したように笑った陽貴君の瞳が、急に艶っぽくなる。

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