キミノオト
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「お邪魔します…」
貸してくれたカードキーを使ってお家に入る。
整理整頓された清潔感のあるこのお家は、大好きな彼と同じ香り。
陽貴君には家を出る前に連絡はしたけど、悪いことをしているようでなんだかドキドキしてしまう。
手を洗って、作り置き達を冷蔵室と冷凍室に分けて入れる。
初めてお邪魔した時より職務を全うしている冷蔵庫。
ほとんどが調味料と飲み物だし、一般的に見たら全然スカスカなんだけど。
持ってきたすべての料理を入れ終え、冷蔵庫の扉を閉じる。
「迷惑じゃなかったかな…」
ふいに口からこぼれる不安。
正直、作っているときから頭をちらついていた。
いつもおいしいって食べてくれるけど…もしかして作り置きは重い?
そもそも、優しいからおいしいって言ってくれるけど、本当は好みじゃない可能性もあるよね。
一度声に出してしまったら、思考はどんどん悪い方向に向かってしまう。
会いたいって言ってくれるのも、社交辞令だったかも。
休みなく働いてるんだもん、時間があるならゆっくりしたいよね。
それにどう考えても他人がうろちょろしている家で、仕事に集中できるはずがない。
浅はかだな自分…。
冷蔵庫の前ということも忘れ、しばらくあれこれ考えた結果。
「…帰ろうかな」
「いやいやそんなの許さないよ」