キミノオト

「じゃあ、行ってくるね」

「いってらっしゃい」

お昼過ぎ、お仕事にでかけていく陽貴君を見送る。

なんか、新婚さんみたい?なんて、はずかしい妄想しちゃったりして。

私なんかがおこがましい。

そんなことより、今のうちに。

「さぁ、やるぞ!」

私は腕まくりをすると、夕食の支度にとりかかった。

今日はクリスマスパーティーをする予定だから、より一層気合いが入る。

ケーキも手作りして、あとは帰ってくるタイミングで料理を温めるだけ。

ちょっと作りすぎちゃったけど、なんとか間に合ってよかった。

ソファに座ってテレビをつける。

画面の中で、キラキラした出演者さん達が代わる代わるパフォーマンスしていく。

クリスマスだからか、みんな普段以上に衣装が華やかな気がする。

陽貴君の周りには、こんなかわいくてきれいでキラキラした女性ばかりいるんだと改めて感じた。

それに比べて私は。

本当に私なんかが隣にいていいんだろうか。

全然釣り合ってない。

わかっていたはずなのに、改めて実感すると心がずんと重くなった。

「お次は、トリノコシの皆さんです。それではどうぞ」

司会の方の声にハッとする。

演奏が始まり、アップにされた陽貴君の首元に光るハートのネックレス。

私がプレゼントしたものだ。

本当につけてくれてる。

それだけのことなんだけど、私にとっては幸せで。

歌っている陽貴君もかっこよくて見惚れてしまう。

なんだか本物に会いたくなっちゃったな。
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