キミノオト

【14】


<もう少しでつくよ>

陽貴君からメッセージが届いた。

トリノコシの曲を聴きながらご飯を温めつつ、テーブルセットをする。

喜んでくれるといいな。

玄関の開く音がして、パタパタと小走りで向かう。

「陽貴君、おかえりなさい!」

リビングのドアを開けながら確認もせず声をかける。

「くっそうらやましいな。お前だけかわいい彼女作りやがって」

「わぁ、新婚さんみたい。あ、海音ちゃん、お邪魔するね」

帰ってきたのは陽貴君だけじゃなかった。

勢いよく出迎えてしまったのが恥ずかしい。

誠さんと綾さんは、慣れたようにリビングへ入っていく。

「ごめん、振り切れなかった」

申し訳なさそうにする陽貴君。

「大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたけど」

笑いながら返すと、安心したように笑ってくれる。

「え、めっちゃいいにおいなんだけど!!」

リビングから聞こえる誠さんの声に、ため息をつく陽貴さん。

「はりきってたくさん作りすぎちゃったから食べてってもらおうよ」

「いいの?」

もちろん、と笑うと、急いで夕食の支度を再開した。

「お口に合うといいんですけど…」

「うまそう!いただきます!…うんまっ!」

「本当においしいね。いつもこんなに美味しいものたべてるなんて羨ましいな。どうりで最近顔色がいいわけだ」

口々にほめてくれる。

お世辞でもうれしい。
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