キミノオト
「ごめんなさい」
「海音?」
私の変化に気づいたのか、心配そうに顔を覗き込んでくる。
それがさらに私の胸を締め付けた。
私は今、陽貴君に怒りを我慢させてしまったんだ。
本当、害しかないな私って。
「ごめんね、私、勝手に作り置き作ってきちゃったの」
「…え?」
状況が理解できていないという顔。
「ちゃんとご飯食べてほしいなって思って。迷惑かもとか考えられてなくて、勝手なことしてごめんなさい」
私の言葉の途中で、冷蔵庫を開けた陽貴君。
「なにこれ…」
「重いよね。ごめんなさい、持って帰る」
泣きそうになりながら冷蔵庫に手を伸ばすと、それを阻止するように腕が掴まれ、冷蔵庫の扉が閉められる。
「ダメだよ」
気づけば陽貴君の腕の中。
「ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい」
「気を遣わないで。迷惑なら迷惑って」
「海音が俺を想ってしてくれることを、迷惑なんて思うことは絶対にない」
私の言葉を遮って、はっきりと否定する彼。
「そもそもかわいい彼女が作ってくれた料理が嬉しくないわけないじゃん」
大好きな香りと温かい体温に包まれながらかけられる優しい言葉に、棘がすっと抜けていく感覚。
「私、帰りたかったわけじゃないの。怒らせちゃってごめんなさい」
謝ると同時に涙が溢れだす。
自分が情けない。