キミノオト
困ったような顔の陽貴君は、脱いだ上着をソファの背もたれに置きながらゆっくり口を開いた。
「ごめん。俺、海音の過去のこと少しだけ優麻さんから聞いた」
思いがけない言葉に息をのむ。
「話したくないなら無理には聞かない。けど、今みたいに苦しそうにみえる時があって、何もできないのが悔しいって思ってた」
冷え切った私の手をそっと包み込んでくれる温かい手。
「海音のことが大切だから、ずっと一緒に居たいから、俺にも苦しみをわけてほしい。苦しいときは隠さなくていい。無理に笑わなくていいんだよ」
優しい言葉に、涙が溢れだす。
「私…」
聞いてほしい。
この人には話しておきたい。
ゆっくり話しだすと、優しく相槌を打って聞いてくれる。
話し終えたころには不思議と少し胸が軽くなっていた。
「話してくれてありがとう。つらかったね」
優しく抱きしめられ、胸がじんわり温かくなる。
きっと優麻ちゃんは、陽貴さんがこうやって受け止めてくれる人だと見抜いていたんだろう。
お気楽そうだけど、人を見る目があるから。
「きいてくれてありがとう」
「その男に対していろいろ思うところはあるけど、俺は海音を幸せにしたいって本気で思ってる」
体を離し、まっすぐ私を見つめる優しい瞳。
「まだ付き合って日は浅いけど、これははっきり言える。海音、愛してる」
とまったはずの涙がまた溢れだし、恥ずかしそうにはにかむ陽貴君の顔がぼやけて見える。
私も同じ気持ちなのに、頷くことしかできない。
幸せで胸が苦しくなることもあるんだね。
そんな私を陽貴君はまたそっと抱きしめてくれた。