キミノオト
私の暗い顔を見て、一度気分転換をしようと、お風呂に入ることを提案してくれた陽貴君。
じゃあ、陽貴君から先に入って、と、無理やりお風呂に送り出す。
陽貴君がお風呂に行くのを確認すると、大急ぎで支度を始めた。
持ちきれないものは捨ててもらおう。
とりあえず、袋にひとまとめにして…
陽貴君に手紙を書く。
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陽貴君へ
何も言わず帰っちゃってごめんね。
私なんかにこんなこと言われたくないだろうけど、別れてほしい。
今日、改めて住む世界が違うなって思った。
私なんかじゃ、陽貴君の隣にはふさわしくない。
きっと、陽貴君はそんなことないって言ってくれると思う。
でもね、足を引っ張りたくはないの。
みんなが作り上げてきた大切なものを、私なんかに邪魔されないでほしい。
2か月、本当に幸せだった。
夢を見させてくれてありがとう。
これからも応援してるよ。
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きっと陽貴君は、人間みんな平等だと思ってる。
でもね、みんな平等ってわけにはいかない。
世の中には私みたいに価値のない人間も存在するんだよ。
何も与えられないのに、大切な人の足を引っ張る。
ごめんね。
記事になってしまったものは、もうなかったことにはできない。
陽貴君が言ってくれたのと同じように、私も何を言われてもいい。
だけど、側に居続けることで陽貴君の足を引っ張り続けるのは嫌なの。
私は役立たずのダメ人間だから、きっと今回だけじゃなくてこの先たくさん迷惑をかけることになる。
ずっと側に居たかったな。
大粒の涙がぼろぼろと溢れて止まらない。
私は物音を立てないように部屋を出ると、部屋付のポストに鍵を入れた。