キミノオト
優麻side


「おーい!海音!お疲れ!」

少し青い顔をした海音が駆け寄ってくる。

「お疲れ様。待たせちゃってごめんね」

何事もなかったかのようにふるまっているけど、またあいつに似た人でも見たのかな?

はやくあんなやつのことなんて忘れてしまえばいい。

海音を苦しめ続ける憎い男。

私は、元々付き合うのには反対だった。

もちろん何回も止めたよ。

けど、海音は自分を好きだと言ってくれる人にはこの先巡り合えないかもしれないから気持ちに応えたい、なんて甘いこと言って。

結果、こんなにも深く心に傷をつけられて。

弟が子供のころ海音の元カレと同じスポーツクラブにいたから、私は昔から存在は知っていた。

あまり評判が良くなかったし、絶対海音にはもっといい人がいた。

でも、海音は、かなり自己肯定感が低い。

元々自信のあるタイプではなかったけれど、あいつと付き合い始めて、どんどん自信をなくしていった。

海音は、友人の贔屓目をとっても、かなりかわいい。

その証拠に、今も近くを通る男どもがちらちらと海音を気にしていく。

色白の肌、華奢な体、傷みを知らないさらさらの黒髪。

長いまつげに覆われている茶色がかった大きな瞳。

守ってあげたくなるような儚さを感じさせる。

だけど、この子の魅力は外見だけじゃない。

優しい子なのだ、この子は。

私が今まで出会った人の中で、一番心がキレイだと思う。

私が男なら、絶対に放っておかない。
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