キミノオト

【15】


予定通りホテルで寝泊まりし、無事年内の仕事を終えた。

明日から連休に入るから、このまま特急電車で実家に帰ることになってる。

優麻ちゃんがどうしても一緒に帰るというので、駅で待ち合わせた。

未だに陽貴君から連絡は来るけど、何も返していない。

「本当に帰るの?」

「うん」

「じゃあ、一人で出歩かないようにね。何かあったら呼んで。いつでも行くから。それから、念のため防犯ブザーは持ち歩くこと」

優麻ちゃんは心配性だなぁ。

とはいえ、恐怖心があるのも事実。

なるべく家に引きこもって過ごそう。


電車に揺られること1時間半。

見慣れた駅で電車を降りる。

「帰ってきたね。本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

ずっと心配してくれてる優麻ちゃんを安心させるように笑顔を見せる。

「そっか。じゃあ何かあったらすぐ連絡して。気を付けて帰ってね」

心配するように私の手を握って、声をかけてくれる優麻ちゃん。

「ありがとう」

妹ちゃんに迎えに来てもらっていた優麻ちゃんとは駅で別れ、一人実家に向かって歩く。

一緒に乗っていきなよって言われたけど、迎えがくるって嘘ついちゃった。

妹ちゃんにまで迷惑かけられないし。

ガサッ

突然の物音に驚いて足を止めると、野良猫が走り去っていく。

なんだ、ねこか…。

ほっと胸をなでおろす。

自分で決めて帰ってきたくせに、1人になった途端不安でいっぱい。

情けない話だよね本当。

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