キミノオト

早く陽貴君のところに行かないと。

そう思うのに、恐怖で体が動かない。

「固まっちゃってるよ、かわい~」

「男慣れしてないんだ~」

「じゃあ、俺らがいろいろ楽しいこと教えてあげるね。行こう」

両腕をつかまれ、さらに人通りの少ない方へ引き込まれる。

「やだ、やめて!」

「やめるわけないじゃん笑」

「いいから早く来い。手間かけさせんな」

抵抗するもむなしく、地面から足が離れる。

「陽貴君助けてっ」

自然と口から出た言葉。

家で待っている彼がこんなところにいるはずないのに。

「ねぇ、僕の大事な彼女に何しようとしてるの?」

大好きな高めの声。

後ろから抱きしめられる温かな体温と落ち着く香り。

一瞬で安心感に包まれる。

また助けに来てくれた。

「は?彼氏?」

「はったりだろどうせ。横取りはよくないよ~お兄さん」

「信じたくないならそれでもいいけど」

食ってかかる二人組に、いつもの優しい声で返す。

「その手、どけてくれる」

一転して、初めて聞く怒気を含んだ低い声。

二人組はあわてて手を離すと、なんなんだよ、と言いながら逃げて行った。

「大丈夫?怖かったね」

私の正面に回ると、いつもの優しい声で心配してくれる陽貴君。

「助けてくれてありがとう」

涙が止まらない私をなだめるように頭をなでる。

「とりあえず、家に帰ろう」

手をひいて歩き出す陽貴君。

人前で手をつなぐなんて、ばれたら大変なことになる。

わかってるのに、今は離したくない。

自分勝手な彼女でごめんね。
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