キミノオト
無事実家にたどり着くと、さっさとお風呂をすませてご飯も食べずに布団に入る。
そんな私を見て親は心配そうにしていたけれど、気づかないふりをした。
どうしてもご飯を食べる気になれず、たった数日で3キロやせた。
いいダイエットになってると思う。
「陽貴君…」
スマホの中の彼は、私だけに微笑んでくれている。
もう、この瞳が私を映すことはないんだな。
気を抜くと、無限に涙が溢れてくる。
体の中の水分全部出て行っちゃうんじゃないかってくらい。
いつの間にか泣き疲れて眠りについていた。
『お前なんかが幸せになれるわけないだろ』
『黙って言うこと聞いてろ!!』
汗だくで飛び起きる。
今日も悪夢。
時間を確認すると、30分ほど眠っていたようだ。
あの日から、まともに眠れていない。
もう一度寝ようにも寝付けず、今日もろくに眠れないまま朝が来た。
特に予定もないので、1日家に引きこもって過ごす。
気づくと陽貴君のSNSやトリノコシの動画を見ている自分に驚く。
本当に無意識で、体は正直に、こんなにも陽貴君を求めてるんだなって痛感する。
「陽貴君、会いたいよ…」
自分で離れるって決めたくせに。
本当に自分勝手で嫌な女だな。
自己嫌悪を繰り返しているうちに、気づけば日が落ちて部屋が薄暗くなっていた。
気分転換でもしよう。
軽くメイクを済ませると、車の鍵を持って部屋を出た。