キミノオト
コンコン
突然、誰かに窓をノックされ、驚いて外を見る。
その人と目が合った瞬間、心臓がどくどくと動き出し、冷や汗が出はじめた。
ちらりと鍵を確認する。
鍵は閉まってる。
大丈夫、落ち着け。
「おーい、あまね」
へらへら笑いながら、ドア開けてよー、なんて言っている男。
「龍也…」
私に呪いをかけた男が、目の前にいる。
「少し話そうよ~」
「私は何も話すことない」
震える手でスマホを握る。
「まぁ、そういわずにさ。開けないと、どうなってもしらないよ?」
この人はキレると、そこら辺のものを無差別に壊す。
今も、ドアを開けようとしてドアノブをガチャガチャしている。
鍵がかかってるから、開くことはないけど。
少しだけ窓を開け、窓から離れる。
「壊れるからやめて」
「そんな警戒すんなって。寒いから入れてよ」
「しらないよ」
「入れて」
「無理」
この人の頭の中がどうなってるのか、私には理解できない。
「いいんだ、そんなこと言って」
にやにや笑うと、龍也はスマホの画面をこちらに向ける。
「これ、海音でしょ?」
「なんのこと?」
平静を装って答えるけど、心臓はバクバク。
「ごまかしても無駄だよ~」
見せられたのは、例の記事に使われた写真だった。
私の顔は隠されていたから、わかるはずもないのに。
どうしてこの人は、こんなに自信満々なんだろう。