キミノオト
「この写真撮ったの俺」
「…え?」
「友達から海音の目撃情報もらってさ、周辺探してたらたまたまこの場面見つけちゃった」
楽しそうに話すこの人が怖い。
「お前には何もかもブロックされてたからなかなか居場所がわからなかったけど、たまたまダチが見つけてくれてラッキー」
そういって見せられた写真は、確かに私だった。
「わざわざ探しに行ったら、俺の海音がほかの男と歩いててさ~。よくみたら、今人気でてるバンドのボーカルにそっくりで、もし違っても俺には痛手ないから匿名でマスコミに情報渡してみた」
「なんでそんなこと…」
「お前が悪いんだよ」
笑っているけど、笑っていない。
「とりあえずさ、早くドア開けてくれないとあることないこと言いふらしちゃうよ?」
やっぱり私のせいだった。
これ以上、陽貴君に迷惑はかけられない。
鍵を開けると、嬉々として助手席に乗り込む龍也。
途端に車内に広がるたばこのにおい。
「早速だけど、海音。なんで俺から逃げた?」
ぐいっと近づいて威圧する龍也。
全身が恐怖で震える。
「私たち別れたでしょ。浮気するし、高圧的だし、龍也とはもう付き合えないって伝えたはずだけど」
「納得してねぇし。なのにほかに男作ってるって、お前何様?」
大きな声で威圧され、びくっと体が揺れる。
こわい。
「納得する気ないじゃん。たくさん女の子と遊んでたあなたにそんなこと言う資格ないと思う。とにかく、私は、もう龍也の彼女でもなんでもない」
はっきり言い返すと、チッと舌打ちが聞こえた。