キミノオト

【16】


「そろそろいいよね」

1人盛り上がる男を冷めた目で見つめる。

これが終わったら、私の人生も終わらせてしまおう。

生きていたって、私なんかには幸せなんて訪れないのだから。

涙でぬれた瞳を閉じたその瞬間。

バンッ

勢いよく運転席のドアが開き、目を開けると私の上にいた男が外に転がっている。

「いってぇな!なんだてめぇ!」

「海音の彼氏だけど」

その声をきいて、龍也を引きずりだした人物を確認する。

どうしてこんなところに彼が。

「はぁ!?あの記事のせいで別れたはずじゃ…」

「そういうことね。俺たちを別れさせたくて、お前が俺たちの写真をマスコミに流したんだね」

「だったらなんだよ」

毅然とした態度の彼に、龍也が圧されている。

「海音、大丈夫!?」

助手席からかけられた声に振り向くと、優麻ちゃんがいた。

私の体に上着をかけると、腕の拘束を解いてくれる。

「怖かったね」

抱きしめてくれる優麻ちゃん。

私はぼんやりと、車外で行われているやりとりを見つめる。

「悪いけど、そんなことで諦められるほど、海音への気持ちは軽くないんだ」

「そんなこと言っていいのかよ、今回の件で、あんたの人気もガタ落ちだろ?」

そう、私のせいで。

「そんなのどうでもいい。いつでもやり直す覚悟はできてるんだよ」

「ちっ。何と言われようと海音は俺のだ」

「海音はそう思ってなさそうだけど?」

2人の視線がこちらへ向く。
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