キミノオト
「海音、どっちを選べばいいのかわかってるよな!?間違うんじゃねぇぞ!」
選択肢を与えているくせに、選択権はない。
いつもそうだった。
「聞いてんのかよ!」
何も言わない私に、だんだんと龍也の勢いが衰えていく。
「海音、俺を選んでくれるよな?さっきだって俺を受け入れようとしてただろ?邪魔が入らなければ、俺らまた繋がれたんだ」
すがるような目ですり寄ってくる。
やっと口を開く。
期待に満ちた龍也の顔。
「私は龍也が怖い。もうかかわらないでほしい」
自分でも驚くくらい冷たい声が出た。
「そんな…」
「あんたのしてきたことの報いでしょ。さんざん海音を傷つけやがって。別れたくないくらい好きなら、大事に扱えばよかったんだよ。さっさと消えて。もう海音に近づくな」
優麻ちゃんからの言葉に打ちのめされたのか、とぼとぼ歩いていく龍也。
「海音、大丈夫!?」
龍也の車が去っていくのを確認すると、陽貴君が勢いよく振り返った。
「なんでここに陽貴君がいるの?」
それから、みんなも。
車から少し離れたところに立つ誠さんと綾さんにもちらりと視線を送る。
「ごめんね、海音が黙って出てきたって言ってたのがどうしても引っかかって。私が陽貴さんのSNSに連絡いれたの」
私の問いに、優麻ちゃんが説明してくれた。