キミノオト

私の様子をみて、このままではよくないと思った優麻ちゃんが、陽貴君に連絡した。

陽貴君からは、私と話したいけど捕まらない、電話にも出ないしメッセージも既読にならない、アパートに行っても誰もいない状況で、困っていると連絡が帰ってきた。

今回、帰省するにあたって、龍也と遭遇することで私の心が壊れてしまわないか心配して、陽貴君に実家に帰省することを教えた。

仕事の都合で、同じ日にくることはできなかったけど、今日、私の実家に優麻ちゃんが案内する予定でいた。

もちろん私は何もきかされていなかったけど、私の親とも仲のいい優麻ちゃんは、両親にはすでに相談していたらしい。

3人を駅に迎えに行って、到着を待ってるときに私からの動画が届いて、合流するなり慌ててここに来たと。

私が優麻ちゃんからだと思って出た電話は、ここに来る途中に陽貴君がかけたものだったようで、私たちの会話の内容は陽貴君には聞こえていたらしい。

つまり、最後まではされていなくとも私が汚されたことを知っているわけだ。

乾いた笑いがこぼれる。

「ありがとうございました。私なんかのためにわざわざ来ていただいて」

「あ、海音…?」

「優麻ちゃんも、心配してくれてありがとう。寒いから、話は明日にしない?」

困惑している様子のみんなにもやんわり一人にしてほしいと伝える。

意図が通じた様子の優麻ちゃんは、みんなを連れて自分の車に乗り込んだ。

陽貴君だけが、その場から動かずじっと私を見つめている。

「ほら、陽貴君も。今日はホテルに泊まるの?寒いから早く車に「海音」」

私の言葉を遮る。

「俺はここに残る」

優麻ちゃんは、そう来なくちゃ、と車を発進させた。
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