キミノオト
陽貴君を連れて、家に帰る。
「突然伺って申し訳ありません。お邪魔します」
「そうかしこまらないで、どうぞどうぞ」
優麻ちゃんが先手を打って連絡していたらしいから、なんの躊躇もなく招き入れられる陽貴君。
「いやー、本物もきれいなお顔ね」
「母さん、やめなさい」
まじまじと陽貴君のお顔を眺める母とそれを窘める父。
嫌な顔一つしない陽貴君。
それどころか、きれいな笑顔をしている。
「突然、申し訳ありません。山崎陽貴と申します。ミュージシャンをしています。海音さんとお付き合いさせていただいています」
「有名だからね。もちろん知っているよ。でも、キミ相当モテるだろ。なんでうちの娘なんだ?」
お父さんがいつになく真剣で、私も背筋が伸びる。
「海音さんは裏表がなくて、いつでも他人を思いやれる優しい心を持っている方です。嘘が苦手で、感情が表に出やすくて、一緒にいて安心できる。海音さんは間違いなく、これまで僕が出会った中で、一番心がキレイな人です」
「もういいから!!」
ほめられすぎて、誰のことか途中からわかんなくなっちゃったよ。
「本気でうちの娘を好いてくれているんだな」
「はい。許されるなら、すぐにでも結婚したいと思っています」