キミノオト
【18】
翌日。
人目につかないよう、カラオケ店の一室に集まった私たち。
「ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
勢いよく頭を下げる。
「頭上げてよ。あんな必死な陽貴初めて見たし、面白かったよ」
「そうそう、動画撮っときゃよかった。むしろ、面白いもの見せてくれてありがとうだよ」
笑ってくれる綾さんと誠さん。
「海音が元気になってよかった。昨日の海音、人形みたいで心配した」
泣きながら抱きしめてくれる優麻ちゃん。
「綾ちゃん、誠、一緒に来てくれてありがとう。優麻さんも連絡くれてありがとうございました」
陽貴君からのお礼に、みんなが笑っている。
「ありがとうございました」
続いてお礼を言うと、誠さんが笑いながらこの数日間のことを教えてくれた。
あのクリスマスの日、突然髪がびしょ濡れなままの陽貴君が必死な様子で部屋を訪ねてきたこと。
私がいなくなった、電話をかけても出ない、と、泣きそうな顔だったらしい。
次の日以降も、何回アパートを訪ねても帰っている様子がないし、相変わらず電話もメッセージもダメで見たことないくらい落ち込んでたこと。
かろうじて仕事の時はスイッチが入るけれど、それが切れるとずっとスマホを握って、私の写真を眺めながら連絡がくるのを待っていたんだって。
優麻ちゃんからの連絡で、やっと居場所をつかめたと大喜びしてたこと。
だけど話をきいてもらえないかもと落ち込んで、珍しくネガティブな姿を見たって。
それから、昨日やっと電話がつながったと喜んだのも束の間、様子がおかしいからと、陽貴君だけが状況をきいていたけど、どんどん般若みたいな顔になって、聞かなくても悪い状況なのが一目瞭然だったそうだ。