キミノオト

結果、大所帯で電車に乗り込む。

「海音、引っ越しちゃうんだよね?」

私の左手で光る指輪を見つめながら、優麻ちゃんに問いかけられる。

「もちろん」

私より先に陽貴君が答える。

「そうみたい。優麻ちゃんと離れるのさみしい」

「私もだよ」

「じゃあ、優麻さんも引っ越してきちゃえば?」

綾さんの言葉に、みんながきょとんとする。

「うちのマンション、下の方はそんな高くないよ」

そういって見せてくれた画面には、陽貴君達のマンションの2階のお部屋の物件情報。

たしかに、金額は今のアパートとそんなに変わらない。

むしろ、きれいになってセキュリティも整うし、悪い条件ではない。

「え、きれいなとこだね。引っ越すわ」

即決した優麻ちゃんは、早速見学申し込みをしていた。

驚くべき行動力。

「私は早くて再来月くらいかなぁ、引っ越せるの。海音は?」

「私も優麻ちゃんと同じ日にしようかな」

「いやいやいや。海音は、即日でしょ」

陽貴君が慌てて話に入ってきた。

「荷物だって、最低限生活できるものそろってるんだし、家具家電は既にあるから移動する必要ないし」

「陽貴が必死に説得してる」

「一刻も早く海音ちゃんと住みたいんだね」

くすくすと笑っている綾さんと誠さん。

笑うな!って2人に怒る陽貴君。

わちゃわちゃ少年のように戯れる3人に、優麻ちゃんと顔を見合わせて笑う。

和やかな空気の中、私たちは住み慣れた街に戻ってきた。
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