キミノオト
【19】
今年も残すところ数時間。
大画面の前で、陽貴君達の出番を待つ。
日付が変わる前には帰ってこれないだろうからと、私が一人での年越しになることを心配した陽貴君の提案で、優麻ちゃんが遊びに来てくれている。
「愛しの旦那様はそろそろかね~」
「旦那様って」
「海音が幸せになるのは嬉しいけど、独り占めする時間が減っちゃうのは寂しいなぁ」
なんて言いながら抱きしめてくれる優麻ちゃん。
「すぐに結婚するわけじゃないよ。反対される可能性だってあるし」
陽貴君のご両親や事務所の方が、私のことを認めてくれるとは限らない。
でも、たとえ認めてもらえなくても、認めてもらえるように努力する覚悟はできてる。
「いい顔してるね」
温かい笑顔に、微笑み返す。
すると、ちょうどトリノコシの出番がやってきた。
「このような大舞台で、僕たちの曲を披露する機会をいただきありがとうございます。今年もたくさんの方に僕たちの曲を届けられて、幸せな1年でした。来年も駆け抜けていきたいなと思いますので、よろしくお願いいたします!」
話し終わると同時に前奏が終わり、力強い歌声を響かせる。
今日披露しているのは応援ソングって言えばいいのかな、きいていて勇気が出る曲。
テレビ越しでも、会場の盛り上がりが伝わってくる。
「かっこいいなぁ…」
「惚気」
こんなかっこいい人にプロポーズしてもらえたなんて、キセキ以外のなにものでもない。