キミノオト

「優麻ちゃんのおかげで、私今すごく幸せ。ありがとう」

本当に、感謝しかない。

笑って頭をなでてくれる優しい手。

「お互い引っ越しするわけだけどさ、せっかく同じマンションなんだし、たまにはうちにも泊まりに来てね?」

「もちろん!ごはんもじゃんじゃん作るよ」

「ハンバーグをリクエストします!」

顔を見合わせて、笑いあう。

私は恵まれているな、と思った。

少し前までは、神様はなんて意地悪なんだろうと思っていた。

神様、私を見放さないでくれてありがとうございます。

「あの日、テーマパークに誘ってくれて、陽貴君と出会わせてくれてありがとう」

もう一度、心から感謝をこめて優麻ちゃんにお礼を伝える。

「幸せになってね」

一瞬驚いた顔をしていたけれど、少し涙ぐんだ瞳を細めて大好きな温かい笑顔を見せてくれる。

「優麻ちゃんもね」

「え?」

優麻ちゃんの手首で揺れる華奢なブレスレットを指さす。

「それ、男性からの贈り物でしょ」

「な、なぜそれを」

焦っている優麻ちゃんに詰め寄る。

「海音さんをなめてもらっては困りますねぇ」

「変なところで鋭いんだよなぁ」

その後、私からの質問攻めに観念して白状する優麻ちゃん。

お相手は職場の先輩で、1つ上の方らしい。

お互いの惚気を聞きながら、わいわいきゃっきゃしていると、陽貴君が帰ってきた。

「海音まだ起きてたの?珍しいね」

時計を見ると、3時を指していた。

陽貴君といる時ならとっくに夢の中の時間。

つい時間も忘れて盛り上がってしまった。

慌てて優麻ちゃんと客間に行くと2人で一つの布団にもぐりこむ。

陽貴君は、え、海音そっちなの?と少し不満そうにしていた。
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