【失恋同盟】



帰りの電車は、人が少なくて静かだった。

窓の外を流れる景色も、どこか穏やかで。



「忘れられた?」


「え?」



隣に座る佐成くんが、私の方をチラッと見てそう言った。



「高瀬のこと」



その名前が出た瞬間、胸がドキッとなる。

駿のこと。
あんなに気にしてたのに。

でも、今日一回も考えなかった。

海の風、貝殻、佐成くんの肩。

全部が、私の心を満たしてくれていた。


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