【失恋同盟】
「佐成くんのおかげで、楽しい日になったよ」
そう言って笑った瞬間。
ぎゅっ。
佐成くんに、抱きしめられた。
「え?」
佐成くん、ここ電車だよ…!? 人は少ないけど、でも…!
「急に、どうしたの…!?」
そう聞くと、佐成くんはすっと離れていった。
「いや、急に思い出した」
前かがみになって、顔を手で覆う佐成くん。
その背中が、いつもより小さく見えた。
思い出したって…何を?
聞きたいのに、言葉が出てこない。
佐成くんの顔を見ても、肝心なことを聞けなかった。
私は、佐成くんのおかげで前に進めてる。
でも、佐成くんは違う?
その問いが、静かに心に残った。