【失恋同盟】
⑤ 影色彼女



ある日の昼休み。



「京也いない?」



廊下から、女の子の声が響いた。

しかも、名前呼び。

その瞬間、教室がざわざわし始める。

誰? 佐成くんと、どういう関係? なんで名前呼び?

隅の方にいた佐成くんが、なんだか少し面倒くさそうな顔をして立ちあがる。

そして、その女の子と一緒に教室を出ていった。



「どういう関係なのかな?」



結菜が、私にそう聞いてくる。


私は佐成くんのこと、何も知らない。



「…わかんない」



そう答えて、ため息をついた。

佐成くんの好きな食べ物も、家族のことも、昔のことも。

私だけが、いつも佐成くんに助けられてる。


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