令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第4話 週末の遠出
土曜日の朝、吉川芙美はまだ眠気の残る街を抜けて、駅の改札前で待っていた。秋の空は澄んだ青に輝き、そよ風が街路樹の葉を軽く揺らす。通りには、週末の穏やかな喧騒が漂い、遠くで自転車のベルや朝の買い物客の声が聞こえる。芙美は小さなバッグを肩にかけ、コートの襟を整えながら、期待を抱いていた。
改札の向こうに三浦侑の姿が見えた。いつもはスーツ姿の彼だが、今日はラフな白いシャツにダークグレーのジャケット、眼鏡の奥で光る瞳には穏やかな笑みが浮かんでいる。肩の力が抜けた私服姿に、芙美の心臓がどきりと跳ねた。普段のきちんとした印象とは異なる、どこか無防備で親しみやすい雰囲気が、彼女に新しい彼の一面を見せていた。
「待たせた?」
侑が軽い口調で尋ねると、芙美は微笑みながら首を振った。
「ううん、私が早く来すぎただけ」
そう答えながら、彼女は侑の姿をそっと見つめた。