令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 夜、アパートのベランダに出た芙美は、夜空を見上げた。都会の光に少し霞む星々が、静かに瞬いている。
 温泉街の湯気、足湯での会話、侑の肩の温もり――が、まるで心のキャンバスに鮮やかな色を塗るように、彼女を満たしていた――何気ない遠出が、ふたりにとっては小さな記念日のように思えた。

 同じ空の下、侑もホテルの窓辺で夜空を見上げていた。芙美の笑顔や、彼女が肩に寄りかかってきた瞬間の感触が、頭に浮かぶ。この一日が、二人の物語に確かな温かさを刻んだことを、彼は確かに感じていた。
 二人の物語は、こうして少しずつ、確かなものになっていくのだった。
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