令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
侑が、静かに口を開いた。
「俺、計画を立てるのが好きなんだ。だから、どうしても『もっと効率よく』って考えちゃって。でも、芙美が笑ってるのを見てたら、無理に直す必要なんてなかったなって思った」
その言葉に、芙美の胸がじんわりと温かくなった。侑の声には、反省と誠実さが宿っていた。彼が自分の価値観を振り返り、芙美の気持ちを理解しようとしていることが、電話越しでもはっきりと伝わってきた。
芙美は、そっと息を吐き、思いを言葉にしてみた。
「私もね、予定が崩れるのって嫌いじゃないの。ハプニングも楽しいと思えるから。でも、侑さんが『もっと楽しませたい』って思ってくれてたこと、ちゃんわかったよ」
その瞬間、電話の向こうで侑が小さく息を吐く音が聞こえた。まるで、緊張が解ける音のようだった。芙美の心にも、同じように温かな風が吹き抜けた。お互いの気持ちが重なり合い、昼間のぎこちない空気が、ゆっくりと溶けていく。
「芙美」
侑が、静かに彼女の名前を呼んだ。
「なに?」
芙美の声は、ほのかに弾んだ。
「これからも、喧嘩してもいい? その代わり、ちゃんと仲直りするから」
その言葉に、芙美の胸に不意に熱いものが込み上げた。涙がにじみそうになり、彼女は慌てて目をこすった。
「……うん、いいよ」
声が少し震えたが、そこには笑みが混じっていた。電話の向こうから、侑の小さな笑い声が聞こえた。二人の笑い声が重なり合い、深夜の静けさの中で、まるで小さな光が灯るようだった。