令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第10話 友人に紹介する日
週末の昼下がり、吉川芙美は街の小さなカフェの前に立っていた。秋の陽射しが、ガラス張りの窓に映り、街路樹の葉がそよ風に揺れている。カフェの看板には、色とりどりのチョークで書かれたメニューが並び、通りには週末を楽しむ人々の穏やかな喧騒が漂う。芙美は、コートの襟を整えながら、胸にほのかな緊張を抱いていた。
今日、侑さんを友達に紹介する。
何度も頭の中でシミュレーションしたけれど、心臓は早鐘を打つ。侑との関係は、温泉旅行やカフェでの約束、日常のささやかな瞬間を通じて、少しずつ深まってきた。恋愛に慎重だった自分。
それでも、侑の誠実な笑顔や穏やかな声が、彼女の心に確かな光を投げかけていた。だが、親しい友人たちに彼を紹介するとなると、まるで二人の関係を外の世界に初めて開くような、新鮮で少し怖い気持ちがした。
ドアが開く音に、芙美は顔を上げた。そこには、三浦侑が立っていた。スーツを脱ぎ、休日仕様のダークグレーのジャケットに白いシャツ。眼鏡の奥で光る瞳には、いつもの穏やかな笑みが浮かんでいる。