令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



「準備、できてる?」
 侑が軽く尋ねると、芙美は小さく頷いた。
「うん……でも、なんかちょっと緊張してる」
 その正直な言葉に、侑は笑って彼女の手をそっと握った。
「俺もだ。でも、芙美の家族なら、きっと温かく迎えてくれるよ」
 その温もりと穏やかな声に、芙美の心が少し軽くなった。

 玄関の扉が開くと、芙美の母親の明るい声が響いた。
「芙美、早かったわね!」
 母の笑顔に、芙美はほっと息をついた。
「うん、お邪魔します」
 侑も、少し緊張した様子で深く会釈した。
「はじめまして、三浦侑です。今日はお時間いただきありがとうございます」

 その丁寧な挨拶に、母はにこやかに頷き、父もリビングのソファから静かに顔を上げた。リビングには、コーヒーの香りと、母が用意したクッキーの甘い匂いが漂う。窓から差し込む陽射しが、テーブルに温かな光を落とし、家族の時間が穏やかに流れていた。
 コーヒーとお菓子を囲みながら、家族と侑の会話が始まった。芙美の父は普段無口だが、侑の誠実な人柄に好印象を抱いたようで、時折頷きながら話を聞いていた。母はお茶を入れ直しながら、にこやかに侑に話しかけた。


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