令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
そして同じ夜、芙美はアパートのベランダに出て、夜空を見上げた。月の光が、静かに街を照らしている。冷たい風が頬を撫で、彼女の心のざわつきを少しだけ落ち着かせた。だが、胸の奥にはまだ小さな不安が残っている。侑との時間が、ただの偶然の積み重ねではないかもしれない――そんな予感が、彼女の心を静かに揺さぶっていた。
同じ月を、別の場所で侑も見上げていた。ホテルの窓から見える夜空は、芙美と同じ光を放っている。彼の心には、彼女との温かな時間が、まるで新しいデザインのスケッチのように鮮やかに描かれていた。だが、昨日の誤解が、そのスケッチに小さな影を落としている。
揺れる心を抱えながらも、二人は次に会える日を、無意識に楽しみにしていた。この小さなすれ違いが、互いをより深く意識させるきっかけになるとは、まだ誰も知らなかった。