令和恋日和。 ～触れられない距離に恋をして～

「こちらこそ……私、昨日はちょっと誤解してしまって」
　芙美は少し俯きながら、言葉を紡いだ。自分の声が少し震えていることに気づき、頬がほのかに熱くなる。だが、侑の穏やかな笑顔を見ると、肩の力が自然と抜け、彼女の唇にも小さな笑みが浮かんだ。
　二人は窓際の席に並んで座り、コーヒーを注文した。カフェの中は、穏やかなBGMと、豆を挽く香ばしい匂いに満ちている。窓の外では、通りを行き交う人々が週末の気ままな時間を楽しんでいる。会話は、最初は少し慎重だったが、徐々に自然なリズムを取り戻していった。仕事の話から始まり、この街の好きなカフェや、最近見た映画の話題へと広がる。
　話しながら、ふと芙美の手がテーブルの上で侑の手に触れた。ほんの一瞬の、偶然のような接触だったが、彼女の心臓は小さく跳ねた。侑もまた、一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。その空気には、互いに触れ合うことを許す、静かな信頼感があった。芙美は、自分の心が少しずつ開いていくのを感じていた。