令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
カフェを出ると、夕暮れの街が二人を包み込んだ。オレンジ色の光が空を染め、街路樹の葉がそよ風に揺れるたびに、かすかな木の香りが漂ってくる。長い影が歩道に伸び、二人の足音が軽やかに重なる。芙美は、隣を歩く侑の存在に、胸の奥がじんわりと温まるのを感じていた。
「今日、ちゃんと話せてよかった」
芙美の声には、安堵とほのかな照れが混じっていた。彼女は、自分の言葉がこんなにも素直に口から出たことに、内心で少し驚いていた。侑は軽く首を傾け、穏やかな笑顔で答えた。
「僕もです。誤解なんて、もう忘れてしまいましょう」
その言葉に、芙美は自然に笑みを返した。侑の瞳には、温かさと誠実さが宿っている。その視線が交わった瞬間、言葉以上の気持ちが、まるで静かな波のように二人の間に広がった。芙美の心に残っていた昨日の不安が、夕暮れの光に溶けるように消えていった。